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約束の時間に遅れたら?:失敗から学ぶ時間感覚と保育のヒント

Tags: 時間感覚, 保育, 学び, 声かけ, 年齢別

保育現場では、遊びや活動の切り替え、準備や片付けなど、子どもたちが「時間通り」に行動することが求められる場面が多くあります。しかし、子どもたちの時間感覚は未発達であり、時に約束の時間に間に合わない、活動からスムーズに移行できない、といった状況が起こることは自然なことです。

このような「時間通りにいかなかった」という経験は、単に叱責の対象とするのではなく、子どもたちが時間感覚を学び、自己調整力を育むための大切な機会と捉えることができます。この記事では、子どもたちが時間通りに行動できなかった際に、保育者がどのように関わることで、失敗から学びを得て次につながる力に変えていけるのか、具体的なヒントをご紹介します。

なぜ「時間通りにいかない」のか?:子どもの時間感覚の特性を理解する

子どもたちが時間通りに行動できない背景には、発達段階における時間感覚の特性が関係しています。

これらの特性を踏まえ、子どもが時間通りに行動できなかった場合でも、「なぜ間に合わなかったのか」を子どもの視点に立って理解しようとすることが第一歩となります。

「時間通りにいかなかった」ときの具体的な関わり方

子どもが約束の時間に間に合わなかったり、活動の切り替えが遅れたりした際に、どのように声をかけ、関わることが学びにつながるのでしょうか。

  1. まずは気持ちを受け止める:
    • 「遊びたかったんだね」「楽しかったね」など、まずは子どもの気持ちや行動の背景にある思いに寄り添います。頭ごなしに叱るのではなく、一度受け止める姿勢を示すことが、子どもが安心して次の声かけに耳を傾ける土台となります。
  2. 状況を具体的に伝える:
    • 「もうすぐお片付けの時間だよ、と教えていたね」「この活動は〇時までだったね」など、何が約束だったのか、どのくらいの時間があったのかを具体的に伝えます。責めるような口調ではなく、事実を伝えるように話します。
  3. 原因を一緒に考える(問いかけ例):
    • 「どうして間に合わなかったのかな?」「何か夢中になってたものがあった?」「お片付け、少し時間がかかったかな?」など、子ども自身が理由を考えるきっかけとなるような問いかけをします。
    • すぐに答えられない場合でも、「あの遊び、すごく面白かったからかな?」「おもちゃがたくさんあったからかな?」など、保育者から可能性を提示することも有効です。これは、時間管理がうまくいかなかった原因を、子どもが理解できるようサポートする試みです。
  4. 次にどうするかを考える(未来への見通し):
    • 失敗した原因を踏まえ、「次からはどうしたら間に合うかな?」「もっと早く準備を始めるにはどうすればいいかな?」と、未来の行動に目を向けた問いかけをします。
    • 具体的なアイデアを一緒に考えます。「時計をこまめに見ようね」「お片付けの前に、あと少しで終わりだよ、って教えてね」「タイマーが鳴ったらすぐに始めようね」など、子どもが取り組みやすい具体的な方法を見つけます。
  5. できたこと、変化したことを認める:
    • もし、時間通りにはいかなくても、「片付けは少し早く始められたね」「次はタイマーを意識してみよう、って自分で考えられたね」など、少しでも行動に変化があったり、自分で気づきを得たりした点を具体的に褒めます。成功体験を積み重ねることで、次への意欲につながります。

年齢別の対応例

子どもの発達段階によって、声かけや関わり方のポイントは異なります。

集団活動での応用と個別対応

集団での活動では、全体の流れをスムーズにするために時間管理が重要になりますが、個別の子どものペースや課題にも配慮が必要です。

保護者へのアドバイス

家庭での時間感覚の育みについて、保護者と情報を共有し、連携することも重要です。

まとめ

子どもが時間通りに行動できなかったという経験は、一見ネガティブな状況に見えるかもしれませんが、実は子どもたちが時間感覚をより深く理解し、自分で時間を意識して行動する「自己調整力」を育むための貴重な機会です。

保育者は、このような状況において、子どもを責めるのではなく、子どもの気持ちに寄り添い、「なぜ」を一緒に考え、「次にどうすれば良いか」を共に探求する伴走者となることが重要です。失敗から学びを得る経験を積み重ねることで、子どもたちは時間に対するより良い見通しを持ち、自分で考え行動する力を身につけていきます。

日々の保育の中で、子どもたちが「時間通りにいかない」という経験を通して、未来への見通しを持つ力や、自分の行動を調整する力を楽しく育んでいけるよう、丁寧に関わっていくことが大切です。