赤ちゃんのペースで時間を学ぶ:0歳児・1歳児クラスでできる声かけと関わり方
「じかんのまなびば for Kids」では、子どもたちが遊びや日常生活を通して、楽しく時間の感覚を身につけるためのヒントを提供しています。この記事では、特に0歳児・1歳児クラスにおける、赤ちゃんの時間感覚の育み方についてご紹介します。
乳児期において、時間は抽象的な概念としては理解できません。しかし、日々の繰り返しや感覚を通して、心地よいリズムや予測可能なパターンを感じ取ることは、将来的な時間感覚や見通しを持つ力の基礎となります。この時期の関わり方は、赤ちゃんの安心感を育み、生活リズムを整える上でも非常に重要です。
乳児期における「時間」の捉え方
0歳児、1歳児の赤ちゃんは、大人や幼児が理解するような「○時○分」といった時計の時間や、「明日」「昨日」といった時間軸を理解することはできません。この時期の赤ちゃんにとっての「時間」は、以下のような形で感じ取られています。
- 身体感覚: お腹が空いた、眠たい、おむつが気持ち悪い、といった身体の状態の変化。
- 生活リズム: 授乳・ミルク、睡眠、遊び、排泄といった活動の繰り返し。一日の流れにおける特定の活動の順序。
- 五感による刺激: 朝日の光、食事の匂い、特定の音(例えば、食事の準備の音、片付けの合図の音楽)、抱っこの感覚など。
- 保育者との関わり: 保育者からの声かけ、触れ合い、応答的なやり取りのパターン。
これらの感覚や繰り返しを通して、「この次には心地よいことがある」「この音がしたら次はこれだ」といった予測の萌芽が生まれます。これが、時間の見通しを持つ力の源となります。
0歳児・1歳児クラスで実践できる声かけと関わり方
この時期の赤ちゃんに時間の感覚を伝えるためには、言葉だけでなく、五感や繰り返しのパターンを活用することが効果的です。
1. 生活リズムを大切にする
最も基本的な時間の学びは、安定した生活リズムの中にあります。
- 決まった流れを作る: 一日の活動(起床、授乳・ミルク、遊び、昼寝、離乳食/食事、排泄、散歩など)を、できるだけ毎日同じような流れで行います。これは、赤ちゃんが「次はこれだ」と予測し、安心感を持つことにつながります。
- 活動の始まりと終わりに合図を取り入れる:
- 例えば、授乳・ミルクの前には特定の歌を歌う、食事の前には手を洗う(介助する)といったルーティンを取り入れます。
- 遊びの時間の終わりには、特定の音楽をかける、おもちゃを片付けるカゴを出すといった視覚的・聴覚的な合図を用います。これは、言葉が分からなくても「いつもの合図だ」と感じ取ることで、活動の区切りを意識する助けになります。
2. 五感に働きかける声かけや環境設定
具体的な言葉を理解できなくても、保育者の声のトーンや、周囲の環境の変化を感じ取ることで、時間的な移り変わりを感覚的に捉えます。
- 時間帯に応じた声かけ:
- 朝のお迎え時:「〇〇ちゃん、おはよう!朝だよ、気持ちいいね。」
- 日中の活動時:「いいお天気だから、お散歩に行こうか。」
- 食事前:「いい匂いしてきたね、ご飯の時間だよ。」
- 夕方のお見送り時:「もうすぐお母さん(お父さん)がお迎えに来てくれる時間だよ。」 具体的な活動と時間帯を結びつけて言葉をかけることで、繰り返しの中で時間帯による雰囲気の違いを感じ取れるようになります。
- 光や音の活用:
- 朝はカーテンを開けて明るくする、夕方は少し照明を落とすなど、自然光や照明で時間帯の変化を感じられるようにします。
- 活動によってBGMを変える(ゆったりした音楽、活発な音楽など)。
- 特定の合図の音(片付けの音楽など)を決めておく。
3. 予測可能な繰り返しを楽しむ
同じ遊びやルーティンを繰り返すことで、「この次は何が起こるか」という予測の楽しさを体験します。
- 繰り返しの遊び: 「いないいないばあ」や手遊び、特定の絵本の読み聞かせなど、パターンが決まっている遊びを繰り返し行うことは、時間的な順序や繰り返しを感覚的に学ぶ機会となります。
- ルーティン: 朝の健康チェック、午睡前のおむつ交換と絵本、帰りの支度など、決まった時間に行われるルーティンは、一日の流れを構造化し、安心感とともに時間の予測を育みます。
4. 保育者の応答的な関わり
赤ちゃんのサインを読み取り、適切なタイミングで応答することは、時間的な「間」や「ペース」を感じ取る上で重要です。
- 赤ちゃんのペースに合わせる: 授乳や睡眠、遊びなど、赤ちゃんの生理的な欲求や興味の表れを丁寧に観察し、そのペースに合わせて関わります。大人の都合で急かすのではなく、赤ちゃんの「今」を大切にすることで、心地よい時間の流れを体験できます。
- 待たせる場面の配慮: 他の子どもの対応などで少し待たせる必要がある場合でも、「ちょっと待っててね」「すぐに終わるからね」と短い言葉で声をかけたり、視線を合わせたりすることで、赤ちゃんは自分が無視されていないと感じ、安心につながります。この「少しの時間」の体験も、将来的な「待つ」という時間感覚の基礎となります。
保護者へのアドバイス例
乳児期の時間感覚は、家庭での生活リズムも大きく影響します。保護者と連携する際、以下のような点について情報提供やアドバイスを行うことができます。
- 「ご家庭での一日の過ごし方や、赤ちゃんの眠くなるサイン、お腹が空いた時の様子などを教えていただけますか?園でも参考にさせていただきます。」
- 「園では、食事の前には〇〇の歌を歌うなど、活動の前に決まった合図を取り入れています。ご家庭でも、例えばお風呂の前には『ジャー』と言ってみるなど、特定の活動と音や言葉を結びつけると、赤ちゃんは流れを予測しやすくなりますよ。」
- 「赤ちゃんが安心できるような、できるだけ決まった生活リズムを心がけると、赤ちゃんは次に何が起こるか予測できるようになり、落ち着いて過ごせる時間が増えていきます。」
まとめ
0歳児・1歳児における時間感覚の育みは、具体的な「時間」を教えることではなく、安定した生活リズム、五感への働きかけ、予測可能な繰り返しの体験、そして保育者との応答的な関わりを通して行われます。これらの日々の丁寧な関わりが、赤ちゃんの安心感を育み、将来的な見通しを持つ力や、自分自身でペースを調整する力の基礎となります。赤ちゃんのサインを丁寧に読み取り、一人ひとりのペースを大切にしながら、心地よい時間の流れを共有していくことが重要です。