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自分でできる!準備・片付けで養う子どもの時間感覚

Tags: 時間感覚, 保育実践, 見通し, 片付け, 準備, 発達支援, 自己調整

準備や片付けは、時間感覚を育む大切な機会

保育現場では、遊びや活動の開始・終了に伴い、準備や片付けの時間が日々繰り返されています。これらの時間は、単に環境を整えるためだけでなく、子どもたちが自分自身の行動と時間の流れを結びつけて捉える、重要な学びの機会となり得ます。自分で「〇〇を準備する時間」「△△を片付ける時間」と意識することで、子どもたちは活動にかかる時間の長さを体感し、見通しを持って行動する力を育んでいきます。

しかし、子どもにとって準備や片付けは、遊びのように主体的に取り組むのが難しい場合もあります。時間がかかったり、集中が続かなかったりすることで、活動の切り替えがスムーズにいかないといった課題を感じることもあるかもしれません。

本記事では、保育現場において、子どもたちが準備や片付けを通して楽しく時間感覚を身につけるための具体的なアプローチや声かけのヒントをご紹介します。

なぜ準備や片付けで時間感覚が育つのか

準備や片付けのプロセスには、時間感覚を育むための要素が多く含まれています。

  1. 体感を伴う時間の理解: 「おもちゃを箱に戻す」「粘土板を拭く」「スモックを着る」など、具体的な作業には必ず一定の時間がかかります。こうした体感を伴う経験の積み重ねが、「このくらいの量の片付けには、これくらいの時間がかかるんだな」という、時間の長さに関する感覚を養います。
  2. 終わりを見据えた行動: 片付けは「きれいな状態になる」、準備は「活動を始められる状態になる」という明確な終わりがあります。この「終わり」を意識することで、子どもたちは自然と逆算的に考え、目標達成までの道のりを把握する力、つまり見通しを持つ力を育みます。
  3. 時間の区切りとしての認識: 多くの保育現場では、活動と活動の間に準備や片付けの時間が設定されています。これにより、子どもたちは準備や片付けを「今の時間が終わり、次の時間が始まる合図」として捉えやすくなり、時間の区切りや移行を意識するようになります。

これらの経験を通して、子どもたちは抽象的な「時間」を、自分自身の具体的な行動や、環境の変化と結びつけて理解していくのです。

発達段階に応じた準備・片付けでの時間感覚アプローチ

子どもの発達段階によって、準備や片付けへの関わり方、そして時間感覚の育み方は異なります。

0~1歳児:保育者との共同作業と声かけ

この時期は、自分で準備や片付けを「行う」というよりは、保育者と一緒に体験する中で時間の流れや習慣を感じ取ることが中心です。

1~2歳児:簡単な指示と「できた!」の積み重ね

自分でできることが増えてくる時期です。短い時間で終わる簡単な片付けや準備を促し、達成感を積み重ねることが大切です。

2~3歳児:時間の区切りを意識した声かけと視覚的な手がかり

活動の切り替えが意識できるようになり、簡単な時間の言葉も理解し始めます。時間の区切りや、作業の終わりを分かりやすく示すことが有効です。

3~4歳児:時間を見積もる経験と集団での協力

集団での活動が増え、友達と協力する楽しさも知ります。自分だけでなく、周りの動きも意識しながら準備・片付けに取り組む中で、時間感覚と社会性を育みます。

4~5歳児:計画性と時間管理の基礎を育む

自分で考えて行動する力が育ちます。準備や片付けの段取りを自分で考えたり、より正確に時間を意識したりする経験を重ねます。

保育現場で実践できる具体的なアイデア

保護者へのアドバイス例

園での取り組みを家庭と共有し、連携することで、子どもの時間感覚の育ちをより一層サポートできます。保護者会や日々の連絡帳で、以下の点を伝えるのも良いでしょう。

まとめ

準備や片付けは、子どもたちが日々の生活の中で自然に時間感覚を身につけることができる、身近で具体的な機会です。単なる作業としてではなく、「自分で時間を意識して行動する」「終わりを見通して取り組む」ための学びの場として捉え直すことで、子どもたちの時間感覚だけでなく、自立心や自己調整力、見通しを持って行動する力など、様々な力を育むことにつながります。

今回ご紹介した発達段階別の関わり方や具体的なアイデアが、日々の保育における準備・片付けの時間を、子どもたちが楽しく時間感覚を学ぶための豊かな時間とするための一助となれば幸いです。