『次に何が起こるか』予測する力と時間感覚:遊びや生活での育み方
子どもたちが日々の生活や遊びを通して時間感覚を身につける上で、「次に何が起こるか」を予測する力は重要な役割を果たします。この予測する力は、単に未来の出来事を推測するだけでなく、時間の流れや変化への気づき、見通しを持って行動することに繋がります。
予測する力と時間感覚の関係性
子どもが「次に何が起こるか」を予測できるようになる過程は、時間感覚の発達と密接に関わっています。例えば、「お昼ご飯を食べたら、次は絵本を読む時間だ」という経験を繰り返すことで、子どもは出来事の順序や規則性を理解し、それがある特定の時間帯に起こるという認識を持つようになります。
この「次に何が起こるか」を予測する力は、子どもに以下のような影響をもたらします。
- 安心感の獲得: 次の活動が予測できると、子どもは先の見通しを持つことができ、不安を感じにくくなります。これは特に活動の切り替えが多い保育現場において、スムーズな移行のために重要です。
- 主体性の育み: 次に起こることを予測することで、「次はこれをする準備をしておこう」「この遊びを早く終わらせて次に移ろう」といった主体的な行動に繋がります。
- 時間の流れの理解: 出来事の順序や間隔を経験することで、「この活動は長いな」「これはすぐ終わるな」といった時間の相対的な長さを感覚的に捉える基盤が育まれます。
保育現場で『次に起こること』への予測を育む具体的なヒント
保育現場では、日々の様々な場面を通して、子どもたちの「次に何が起こるか」という予測する力を自然に育むことができます。
日常生活での声かけの工夫
- 活動の予告を具体的に伝える:
- 「お片付けの時間になったら、次は手洗いをして、みんなで絵本を見ましょうね。」
- 「このおもちゃで遊んだら、今度はお外に行く準備をしようね。」
- 単に「次は〇〇だよ」だけでなく、「~が終わったら」という条件や、「~する時間」という時間帯に言及することで、出来事と時間の関連性を意識させます。
- 質問形式で予測を促す:
- 「お片付けが終わったら、次は何をする時間だったかな?」
- 「この後、おやつを食べたら、次は何をして遊ぼうか?」
- 子ども自身に考えさせることで、予測するプロセスを経験させます。
- 過去の経験と結びつける:
- 「きのうはお部屋で遊んだけど、今日は雨だから次は何して遊ぼうか?」
- 「この前の遠足の時は、お弁当を食べた後、どんなことをしたかな?次はどうなるかな?」
- 過去の経験からパターンを見つけ、未来を予測する力を養います。
遊びの中でのヒント
遊びは、子どもが最も主体的に時間や変化に関わることのできる機会です。
- 予測を楽しむ遊び:
- 「この箱の中に、次に何が出てくるかな?」「先生が手を隠すと、何が隠れているでしょう?」など、結果を予測して楽しむ遊びを取り入れます。
- 簡単な科学遊び(水に絵の具を溶かすなど)で、「どうなるかな?」と一緒に予測を立てて観察します。
- 順序やパターンに関わる遊び:
- 積み木やブロックで同じパターンを作る遊び、「あたま、かた、ひざ、ポン」のような体の動きの繰り返し、簡単なルールのある鬼ごっこなど。次に何が来るか、どう動けば良いかを予測する経験に繋がります。
- 時間の経過を意識する遊び:
- 「時計の針がここに来たらお終いね」「この歌が終わるまでやろうね」など、終了の目安を伝えることで、時間の経過を意識させ、終わりを予測する経験をさせます。砂時計やタイマーを見せることも有効です。
集団活動での活用
- 一日の活動の流れの『見える化』:
- ホワイトボードや壁に、その日の活動予定を絵や言葉で貼り出します。「次はこれ」「その次はこれ」と指差し確認することで、子どもたちは一日の流れや次に起こることを視覚的に予測できます。
- 次の活動への移行の予告:
- 活動が終了する少し前に、「あと〇分でこの活動はおしまいです。お片付けを始めますよ。」「この遊びの次は、みんなで集まって歌を歌いましょう。」などと予告することで、心の準備と次の活動への予測を促します。
- みんなで予測を共有する時間:
- 朝の会などで、「今日の午前中はどんなことをする予定かな?」「お昼ご飯の後はお昼寝かな?」などと問いかけ、子どもたちと一緒に一日の流れを予測したり確認したりする時間を持つことも効果的です。
発達段階に応じたアプローチ
- 乳児(0-2歳): 予測は主に五感を通して、非常に身近な繰り返しから生まれます。「抱っこされたら気持ちいいな」「ミルクの後は眠くなるな」「この音がしたらご飯の時間だ」など、身体的な感覚や特定の合図と出来事を結びつけます。保育者は、生活リズムを安定させ、丁寧な声かけと繰り返しによって安心できる環境を提供することが重要です。
- 幼児(3-5歳): 語彙が増え、記憶力も発達するため、言葉や絵による予告が理解できるようになります。簡単な順序のある遊びや、先の活動への具体的な見通しを伝えることで、予測する力が育ちます。自分で簡単な活動の計画を立てたり、結果を推測したりする経験を促します。
保護者へのアドバイス例
保護者に対して、家庭でも子どもの「次に何が起こるか」を予測する力を育む関わりを促すことも有効です。
- 「今日のおやつは何かな?」「お風呂に入ったら、次は何する時間だったかな?」など、日常の小さな出来事について質問し、一緒に予測する会話を楽しむこと。
- 一日の簡単な流れ(例:「ご飯を食べたら、お風呂に入って、歯磨きをしてから絵本を読もうね」)を子どもに伝え、安心感と見通しを持たせること。
- 週末の予定などを子どもに話し、「その日はどんなことをするかな?」と一緒に考える機会を持つこと。
まとめ
子どもが『次に何が起こるか』を予測する力は、時間感覚だけでなく、安心感、主体性、自己調整力など、様々な力を育む基盤となります。保育現場においては、日常的な声かけ、遊びの工夫、活動の『見える化』などを通して、子どもたちが自然に予測する経験を積み重ねられるような環境を意図的に作ることが重要です。子どもの発達段階や一人ひとりのペースに配慮しながら、次に起こる未来への見通しを持つことの心地よさや面白さを伝えていきましょう。