子どもが時間を意識する当番・係活動:役割を通して学ぶ時間感覚
当番活動や係活動が育む時間感覚の芽生え
保育現場では、日々の活動の中に子どもが主体的に関わる機会として、当番活動や係活動が取り入れられています。これらの活動は、単に役割を担うだけでなく、子どもたちが時間を意識し、見通しや計画性を養う上で重要な役割を果たします。
子どもたちは、当番や係の仕事を通して、「いつまでに何をすれば良いか」「この仕事にはどれくらいの時間がかかるか」といったことを自然と感じ取ることができます。これは、抽象的な時間の概念を、具体的な活動と結びつけて理解するための、貴重な学びの機会となります。
当番・係活動と時間感覚の関連性
当番活動や係活動が、どのように子どもたちの時間感覚を育むのか、その関連性を具体的に見ていきましょう。
- 時間の区切りと順序を意識する: 「食事の時間になったら配膳当番の仕事をする」「片付けの時間が終わったら掃除当番が始まる」のように、活動の始まりや終わりが特定の時間や出来事と結びついていることを学びます。また、「まずこれをやって、次にこれをする」といった作業の順序を通して、時間の流れを順序立てて捉える力が養われます。
- 活動に必要な時間を見積もる: 「今日の給食当番は人数が多いから早く終わるかな」「今日の水やり当番はたくさんの鉢があるから時間がかかるな」など、活動の内容や状況によって必要な時間が異なることを経験的に学びます。
- 待つことと協力すること: 自分の当番や係の番が来るまで待つこと、他の当番の子と協力して時間内に仕事を終えることなどを通して、集団の中での時間に関するルールや、他者との関わりの中で時間を意識することの重要性を学びます。
- 見通しと計画性を持つ: 「明日は私が掃除当番だから、朝来たらまず雑巾を濡らしておこう」のように、先の時間の活動を見通し、準備をするといった簡単な計画性を身につけるきっかけとなります。
年齢別の当番・係活動導入と関わり方
子どもの発達段階に応じて、当番活動や係活動への関わり方は異なります。
- 乳児クラス(0~2歳児): この時期は、まだ具体的な当番活動を導入するというよりは、保育士の声かけを通して、生活の流れと時間の区切りを感覚的に伝えます。「今はお食事の時間だよ、〇〇くんの椅子はここだよ」「おもちゃさん、バイバイの時間だよ、きれいにお片付けしようね」のように、特定の行動と時間・場所を結びつける声かけを繰り返します。簡単な「お手伝い」(例:使ったタオルをしまう、絵本を棚に戻す)などを、「〇〇ちゃんがやってくれたね、ありがとう」と肯定的に捉え、活動の終わりや次への移行を意識させるきっかけとすることも有効です。
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幼児クラス(3~5歳児): 3歳児クラス頃から、簡単な当番活動(例:給食当番、お片付けリーダー)を始めることができます。最初は保育士と一緒に、一つずつの手順を確認しながら行います。4歳児、5歳児と進むにつれて、係活動(例:植物の水やり係、生き物のお世話係、お楽しみ係、準備係)など、より継続的で計画性が必要な活動を取り入れていくことができます。
- 声かけの例:
- 「今日の給食当番さん、お願いします。お皿を並べるのは、まずこっちのテーブルからにしようか。」(順序を意識させる)
- 「お掃除当番さん、活動が終わってからお仕事だよ。砂場のおもちゃ、全部片付け終わったかな?」(活動の終わりと次の始まりを意識させる)
- 「明日は〇〇くんが水やり係だね。忘れないように、朝来たらまず植木鉢を見てみようね。」(先の時間を見通す)
- 「この係のお仕事は、あとどれくらいで終わりそうかな?タイマーが鳴るまであと〇分だよ。」(必要な時間を見積もる意識を促す)
- 声かけの例:
保育現場での実践ポイント
当番活動や係活動を通して時間感覚を育むために、以下の点を意識して実践することができます。
- 活動内容を具体的にする: 子どもが「いつ」「何を」「どのように」すれば良いか、具体的な行動として理解できるように説明します。絵カードや写真付きのリストなども有効です。
- 時間の流れを可視化する: タイマーや砂時計、活動の流れを示した絵カードなどを活用し、「この時計の針がここまで来たら終わり」「砂が全部落ちたら次の人」のように、時間の経過を視覚的に示します。
- 集団での協力体制を作る: 一人で全てを行うのではなく、複数の子どもが協力して一つの当番や係の仕事を行うことで、時間内に仕事を終えるための段取りや、お互いの進捗を意識するよう促します。
- 振り返りの時間を設ける: 活動が終わった後に、「今日の給食当番さん、早く準備できたね!」「お片付け係さんのおかげで、お部屋がきれいになったね、ありがとう」のように、活動の結果や、時間内にできたこと・できなかったことについて簡単に振り返る時間を持つことも大切です。
- 子どものペースに寄り添う: 初めての当番や係は、時間がかかったり、戸惑ったりすることがあります。結果だけでなく、取り組む過程を認め、励ます声かけをすることで、自信を持って活動に取り組めるようにサポートします。
保護者への情報提供と連携
園での当番活動や係活動について保護者に伝え、家庭での生活の中でも似たような役割を持たせることの有効性を伝えることも、子どもの時間感覚の育ちをサポートすることにつながります。
- 園だよりや掲示物での紹介: 園での当番・係活動の内容や、それを通して子どもたちがどのように成長しているか(例:時間を意識するようになった、責任感が芽生えた等)を紹介します。
- 個別面談や連絡帳での共有: 特定の子どもの当番・係での取り組みや、そこでの時間に関する気付きなどを具体的に伝え、家庭での様子(例:お手伝いをするようになった、自分で準備するようになった等)を尋ねることで、連携を深めます。
- 家庭での役割分担の提案: 「お食事の準備で自分のコップを運ぶ」「お風呂に入る前におもちゃを片付ける」など、家庭でできる簡単な役割分担のアイデアを提供し、それを通して時間や生活の流れを意識することの大切さを伝えます。
まとめ
当番活動や係活動は、子どもたちが遊びや日常生活の中で、主体的に時間に関わることのできる貴重な機会です。これらの活動を通して、「いつ」「どのくらいの時間」「どのように」といった時間に関する感覚や、見通し、計画性を自然と身につけていきます。
保育士の皆様が、子どもの発達段階や興味に合わせて活動内容を工夫し、温かい声かけで見守り、励ますことで、子どもたちは楽しみながら時間感覚を育んでいくことでしょう。園全体、そしてご家庭とも連携しながら、子どもたちの豊かな育ちを支えてまいりましょう。